令和5年6月定例句会

兼題「網戸」

風を通し、蚊・蠅などの虫の侵入を防ぐために目の細かい網を張った戸のこと。
(合本俳句歳時記第四版より)

梅雨入りはしたものの、しとしと続くというよりは、ざっと降ってカラッと上がって、の繰り返しで、鬱陶しさは控えめです。

今回の兼題は「網戸」。年中、身近にあるものなので、季語としてとらえること自体が新鮮でした。
そこから聞こえる音を詠んだり、風を詠んだり、実体験に基づく句は力を持つと感じました。


あるメンバーから「俳句をやっていると、時間の流れが速くなったように感じる」とコメントがありました。
旧暦に則るために季節を少し先取りして季語を使うことからくるものかもしれませんし、あるいは、毎月の句会の〆切に追われる気持ちがそう感じさせている可能性も。

そういえば、楽しい時間は、早く過ぎ去り、退屈な時間は、なかなか立たないもの。
時間が経つのが速いのは「俳句が楽しくなってきたから」とも言えるかもしれませんね。

公民館前の花壇の紫陽花
季語として捉えると、ちょっと新鮮に映る

主宰の句

網戸より朝を告げたる鳥の声  日差子

主宰特選句

休止符の後の連弾雨蛙       苦楽

終電の灯を眺めたる網戸かな    新治

水母見てゐて水母より見られゐる  瑞憲

互選高得点句

叱られに出社する日や栗の花  新治

来し方は上書き保存七変化   晶子

その他のメンバーの句

黒南風を染み込ませたり犀の皮膚  明恵
別れてもアドレス残す虎が雨    英子
動物園夏の月下に蠢きぬ      裕之
網戸入れ檻の中めく我の部屋    瑠美子
ギヤマンの大皿に盛る揖保乃糸   康明
ギヤマンや一輪挿しの矢来紋    奈央子
城郭の臥龍の松の落葉かな     千惠子
腹見せて網戸の虫の不恰好     あつ子
硝子戸と網戸の間の羽虫かな    孝女
卯の花の匂ふ坂道里近し      五郎
目詰まりの網戸外してひと仕事   はるか

2023/6/4