令和6年4月定例句会

兼題「桜貝」

ニッコウガイ科の二枚貝。殻の長さ三センチ。桜の花弁のような色彩をしているのでこの名がある。北海道以南に広く分布し、浅海の砂泥域に棲息する。波打ち際で洗われているのがよく見られ、殻が美しいので貝細工に用いられる。
(合本俳句歳時記第四版より)

今回の兼題は「桜貝」。花貝、紅貝ともいわれます。

今年は桜の開花が例年より遅く、満開は4月に入ってからとなりました。
毎年のことながら、花の便りを聞くと気分が明るくなります。

そんな桜の名を冠した桜貝。
淡い色のイメージから、「恋」や「思い出」といったキーワードと組み合わされることが多いようですね。
どこでも見られるものではないようですが、貝殻を探しに海へ出かけたくなりました。


遠浅の水清ければ桜貝    上田五千石
仮の世に色あらばこの桜貝  上田日差子

その美しさからアクセサリーにも用いられます

主宰の句

裕次郎灯台そこに桜貝  日差子

主宰特選句

校庭にクレヨンの色チューリップ  明恵

ポケットに想ひをひとつ桜貝    恵実

春雷のいつしか音を待つ余裕    瑞憲

互選高得点句

明日の吾に渡す仕事や星朧  新治

ずつしりと囀り重き一樹かな 瑞憲

その他のメンバーの句

八十年鍬打つ母よ花菜風     裕之
マッチ箱より思ひ出の桜貝    孝女
ふくみたる薬に甘き水の春    千惠子
初音かな畑のなぞへに鍬休め   苦楽
興に入る天燈上げや春の旅    康明
鍵穴に背伸びいっぱい春の風   英子
可惜夜の波とぎれけり桜貝    晶子
夢閉ぢて標本箱の桜貝      瑠美子
掌からこぼれゆく恋桜貝     あつ子
桜貝だけを少女の宝箱      啓子
桜貝握つて幼駆け寄りぬ     千都子
砂浜は昔のつづき桜貝      五郎
うららかや猫駅長のほつこりと  はるか

2024/4/7