令和6年5月定例句会

兼題「鯉幟」

江戸時代には、定紋や鐘馗の絵を染め抜いた幟を兜・長刀・吹流しなどとともに家の前に立てた。古くは紙製であったが、これが小さくなって座敷幟となっていった。武家の幟に対して、町人は、滝をも登るとする鯉を出世の象徴として鯉幟を立て、男子の成長を祈った。これもはじめは紙製であり、五色の吹流しとともに立てる。
(合本俳句歳時記第四版より)

今回の兼題は「鯉幟」。
歳時記によっても異なるかもしれませんが、主季語は「幟」で、その傍題として挙げらていました。

特に市街地では、大きなものを立てるわけにはいかず、また、プライバシーの保護やら少子化やらで、見かけることが少なくなってきました。
郊外では目にします。広い空に泳ぐ鯉幟は気持ちが良い景色ですね。

五月といえば鯉幟、のように季節の風物詩的な季語は、簡単なようで、実は難しい。
多くの人が句にし続けてきたので、いかに類想から抜け出せるかがポイントになります。
かといって、発想を飛ばしすぎても、独りよがりなものになってしまうのが微妙なところ。
過去の例句にたくさん触れておくことも必要かもしれませんね。
創作には、アウトプットとインプットの両方が大事。

見学の方も1名見えて句会も賑やかに

主宰の句

鯉幟天狗の里の風迅し  日差子

主宰特選句

ネモフィラの海に飛びこむ熊ん蜂 裕之

棟上げの知らせ八十八夜かな   啓子

耕のこゑ投げてゐる親子かな   新治

互選高得点句

風に地に触れてやはらか竹落葉  裕之

葉桜となり現世に戻りけり    瑞憲

その他のメンバーの句

葱坊主夜風にタンゴ踊るかな   千惠子
ままごとや白詰草のご飯盛り   明恵
クレヨンの目玉ぎよろりん鯉幟  あつ子
瓶で飲むいちご牛乳昭和の日   恵実
花水木子等十人の英語塾     英子
辿り知る呉の歴史や昭和の日   苦楽
初夏やシャンパンぐいと女どち  晶子
五月雨や大樹に草に隔てなく   孝女
鯉のぼり仲間と泳ぐ川渡し    瑠美子
鯉幟後楽園にところ得て     康明
どら焼きの刻印深し夏浅し    奈央子
竹の子や探しに探す不作年    五郎
灯り満つ巡航船や春の宵     千都子

2024/5/5