令和6年10月定例句会

兼題「暮の秋」

秋がまさに果てようとする意で、「秋の暮」ではない。

(合本俳句歳時記第四版より)

「暮の秋」と「秋の暮」はよく似ていますが、歳時記には別物として立項されています。
「暮の秋」は季節の終わり、暮秋を表す言葉で、「秋の暮」は秋の夕暮れを指す言葉ですね。
俳句以外では馴染みの薄い言葉ですが、季節そのものを愛でて惜しむ心が現れているようで、詩的だなと思います。

とはいえ、10月に入っても夏日が続くような異様な暑さに、この兼題には苦労した方も多かった様子。
何とでも組み合わせられそうな器の大きさも、却って難易度を上げたかも?

稲刈りの時期まで暑い…

主宰の句

時刻表の数字まばらや暮の秋  日差子

主宰特選句

稲妻が縁取りし夜の安芸小富士  千都子

一日は一人に長し鹿の声     新治

萩の風石灯籠の右左       あつ子

互選高得点句

泣く子には泣く子の道理草の花      瑞憲

ジャンケンポイに逃ぐる子追ふ子雲の秋  千惠子

その他のメンバーの句

七輪の煙懐かし痩せ秋刀魚    みなみ
寄り添うて草食む山羊や暮の秋  裕之
紅葉狩市女姿の貸衣装      ⑦パパ
ちちろ鳴く闇の深さをうち重ね  苦楽
暮の秋降るる客なき無人駅    瑠美子
秋雨や無口な司書と二人きり   啓子
玉眼の潤む仏や暮の秋      晶子
独り来て長き祈りの秋遍路    孝女
秋晴や艶やかに巻くナポリタン  明恵
木洩れ日に鋏を入るる葡萄狩   恵実
石仏の並ぶ参道草紅葉      英子
カラカラと心経回し暮の秋    康明
この高き気温返上暮の秋     五郎

2024/10/6