令和6年11月定例句会
兼題「時雨」
冬の初め、晴れていても急に雨雲が生じて、しばらく雨が降ったかと思うとすぐに止み、また降り出すということがある。これを時雨といい、本来は京都など、山がちの場所で見られる現象で、「北山時雨」「能登時雨」などとも使われていたが、しだいに都会でも冬の通り雨を時雨と呼ぶようになった。「神無月ふりみふらずみ定めなき時雨ぞ冬のはじめなりける よみ人知らず」(『後撰和歌集』)にあるように、時雨はその定めなさ、はかなさが本意とされてきた。
(合本俳句歳時記第四版より)
ここ最近は冬に入ってもゲリラ豪雨のような降り方をすることがあるので、すっかり詩情がなくて困ってしまいますが、11月も後半となると、だんだん、時雨らしい空を見かけるようになりました。
しかし、この歳時記の解説は、えらく丁寧で、深い。
ときに何となく使ってしまいそうな言葉ですが、「季語の本意」はしっかり踏まえる必要があります。
そのために歳時記で確認することを怠らないようにしたいものです。

主宰の句
人に蹤く帰路や博多の初時雨 日差子
主宰特選句
灰色の空はからつぽ冬の蝶 恵実
山頭火に会ふため山の落葉踏む 苦楽
夜風鳴る鬼の荒ぶる里神楽 あつ子
互選高得点句
忘却は明日への余白木の葉散る 苦楽
ひとことの温み注いでおでん酒 千都子
狛犬の欠伸する夜や神の留守 あつ子
その他のメンバーの句
靴音の小春日和でありにけり 英子
黄落のベンチで捲る「ぐりとぐら」 みなみ
俳句てふ療法を受く日向ぼこ 晶子
初時雨山門前の石の相 千惠子
初冬のうすき瀬音や巽橋 新治
時雨るるや陸軍墓地の永遠の格 ⑦パパ
独り居の時雨続きの里暮らし 瑠美子
わたあめのあはあはとけて秋行けり 裕之
冬ぬくしシュークリームの隆起撫づ 明恵
船島に人影ふたつ時雨つつ 瑞憲
車止め悠然と去る冬の鹿 五郎
冬晴や鯉の煌めく壇具川 啓子
渋谷駅降りてハロウィン人ひとヒト 孝女
庭先の柿の実たわわお裾分け はるか