令和4年6月定例句会

兼題「蜘蛛」

真正クモ目の節足動物の総称。種類が多く、日本には約千種いる。巣の形には色々ある。夕暮れに尻から糸を出し、木と木の間に円形の巣を作る様をよく見る。その巣を蜘蛛の囲ともいう。女郎蜘蛛などが巣の中心で獲物を待つ姿は印象的。初夏に雌蜘蛛が大きな卵嚢をぶら下げている様子を蜘蛛の太鼓という。それが破れると無数の子蜘蛛が飛び出し、その様子が「蜘蛛の子を散らす」という譬えになっている。
(合本俳句歳時記第四版より)

広島の梅雨入りは例年よりも遅れていて、この日も気持ちよく晴れました。
感染者数のニュースばかりで聞き飽きてきたような気もしますが、引き続き注意しながら、対面で、直接言葉を交わしながら、句会を行っています。


ところで、ランブルでは、「文語」「歴史的仮名遣い」を基本としています。
現代の言葉とはちょっと扱いが異なるため、とっつきにくいと思われがちですが、普段使わない言葉を使うことで詩のモードにスイッチが切り替わる、という効果はあると思います。
また、難しいように感じるかもしれませんが、規則さえ掴めてしまえば、俳句で使う範囲の言葉であれば、そう迷うことはなくなります。

句会に出る句を見てみると、特に、「上二段活用」と「下二段活用」の動詞に誤りが多くみられます。

例えば、現代の私たちが使う「落ちる」という言葉。
実は、現代の言葉で辞書を引けば、その言葉が文語でどう表すのか、何活用の動詞かについても、ちゃんと書かれています。

辞書の見出しは↓こんな感じ。 お・ちる【落ちる/▽堕ちる/▽墜ちる】[動タ上一][文]お・つ[タ上二]

[文]お・つ と書いてありますが、この[文]というのが文語のことです。
また、「タ上二」というのは、「タ行上二段活用」の略で、その言葉が、タチツテトの上側の二段(チ・ツ)で変化しますよ、ということを表しています。

そして、上二段活用は、どんな言葉でも変化の法則は決まっています。ローマ字で書くと「i i u uru ure iyo」。
「落ち」「落ち」「落つ」「落つれ」「落ちよ」という具合です。

ここで、この法則の中に「iru」というものが無いことに注目してください。つまり、「落ちる」という形は無いということです。
何活用かが分かれば、文語の表記の誤りに気付くことができるというわけですね。

これは、その他の活用でも同じで、規則を当てはめれば、それ以外に変化することはありません。
このあたりが、文語の美しさ、論理的なところといえるかもしれません。

余計にとっつきにくい説明になってしまったかもしれませんが…、要は、現代の言葉で現代の辞書を引けば、文語でどう表すのか、答えは書いてあるので、ひとつひとつの言葉を大切に調べて、スキルを獲得していきたいですね、ということです。
長々と失礼しました。

どんな部屋でも句会は可能。今回は絨毯の部屋に座布団で。
苦手な方もいると思うのでイラストにてご登場

主宰の句

動かざることも攻め手や蜘蛛は囲に  日差子

主宰特選句

灯して闇深めたり牡丹園    千惠子

一塊の緋鯉の群れの濁りかな  新治

青蜥蜴「乱れ築き」の石垣に  あつ子

互選高得点句

わたくしの中にも悪女花氷    晶子

良き風と逢ふ万緑の峠かな    新治

頼もしきジューサーの音夏の朝  あつ子

その他のメンバーの句

蜘蛛跳ぬる小さき計算ミスのごと    明恵
蒼き六月三江線の跡歩く        苦楽
蜘蛛の囲のクリスタルめく雨後の朝   瑠美子
覚えなき一筋頰に蜘蛛の糸       啓子
がむしやらに巣を張りてこそ女郎蜘蛛  奈央子
麦畑の上を「伊予灘ものがたり」    瑞憲
蜘蛛飛んで泣く子も有れば笑ふ子も   孝子
蜘蛛の巣のここぞとばかり勝手口    はるか
蜘蛛の糸払ひつつ来る郵便夫      孝女
ひたすらに草を刈り行き垰越さん    五郎
小枝にて払ふ蜘蛛の巣山歩き      康明

2022/6/4