作品集

Selection

これまでに生まれた名句の数々をご紹介します。

互選高得点句  平成29年

十二月


天狼や小便小僧祖谷渓に佇つ   苦楽

内緒かな小さく頷くお茶の花   孝子

小学生のゐない郷なり注連作る  孝女

雪虫や世の九割はすれ違ひ    新治

十一月 吟行句会
(二葉の里歴史の散歩道)


冬紅葉杓子も六つの六地蔵     千惠子

十一月


名月を水面に崩す鯉の口      あつ子

茶の花や病みてやさしき父となり  千惠子

十月 吟行句会
(呉大和ミュージアム)


兵踏みし石の凹みや秋の雨     苦楽

秋時雨入船山の無言館       五郎

(いくさ)日の傷跡(かん)の秋思かな     千惠子

十月


秋天や赤赤赤のスタジアム     瑠美子 

秋刀魚喰ふ炭火で焼きし熱さ喰ふ  苦楽

九月 吟行句会
(熊野町・筆まつり)


彼岸船舞へよ囃せよ秋の天  苦楽

秋うらら筆に心に風通し   あつ子

筆塚や筆の数ほど彼岸花   孝子

筆塚へ筆焚くけむり竹の春  新治

九月


無精髭さはりて二百十日かな  裕志

指先まで女人となりて母踊る  あつ子

八月


星月夜テーブルクロスの銀の匙  洋子

送られて又送りたり星月夜    千惠子

広島忌この青空をとこしへに   四斗樽  

一村の音を呑み込む蝉時雨    正景

広島は祈りの季節夾竹桃     苦楽

七月 吟行句会
(広島市現代美術館)


青時雨光と影の美術館    五郎

万緑を抜けて白さす美術館  孝子

七月 月例句会


夕立や風神雷神天駆くる    瑠美子

ほうたると指さす方の北斗星  蓮女

六月 吟行句会
(湯来温泉一泊吟行)


少年の帽子今宵は蛍籠     あつ子

麻央死せり闇の蠱惑を飛ぶ螢  苦楽

六月


いまもなほ平家の里や螢飛ぶ  豊月

平凡の満ち足る夕の豆御飯   洋子
  
山抜けて川沿ふ鉄路新樹光   瑠美子

五月 吟行句会
(酒都西条)


煙突の担ふ酒名や夏の天   孝子

下戸上戸酒蔵廻る薄暑かな  あつ子

五月


お揃ひの緑の帽子苺かな   裕志

ふんばつて雲の上なり水馬  あつ子

四月 吟行句会
(福山・神辺宿)


漢詩文そはそれとしてさへづれり  あつ子

花みづき四角に丸の手水鉢     千惠子

四月


山越の山の彼方の山笑ふ      松竹

黒猫は眠り菜の花蝶に化す     あつ子

三月 吟行句会
(JR可部線電化延伸)


水の春鵞鳥の喉の伸び縮み     新治

三月


春の月あげて千軒家眠る      千惠子

囀や空に音符を描くごとく     苦楽

暫くは掃かずに置かう落椿     孝子

チョコよりも君にはお猪口梅見酒  あつ子

二月 吟行句会
(縮景園)


梅東風に吹かれ抱かれ時忘れ    あつ子

青空を源流として枝垂梅      新治

二月


室咲や嘘と本音は紙一重      孝子
  
ふんはりと隣の席の春コート    蓮女
 
子ら駆ける枯葉も駆ける前後ろ   洋子

梅ふふむバス停までの「早春賦」  あつ子 

一月


初茜まとひて発ちし航空機     千惠子

 弔句
メトロノーム針振り止めし冬の朝  欣子